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メーヨー・クリニックのうつ病読本

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第1部   うつ病を理解する:

 

第1章    うつ病とは何か?


   *アメリカ人は4人に1人の割合で、人生のある時点でうつ病の発症を一度は経験している。

    但し、うつ病は治る病気である。

 

 

 うつ病の定義 

* 2週間以上のうつ状態がある 

* 気分、行動、思考、ものの見方にかかわる特異な症状を呈する 

* 日々の活動能力が低下する 

* 薬物療法、心理学的療法のどちらかまたは両方を必要とする

 

医学的な障害:精神的、社会的ストレスに影響されることの多い生物学的疾病、憂うつ以上のもの、悲嘆より大きいもの

 

うつ病になる人とは:誰でも発病する、女性に多い、25歳―44歳に多い、人間関係の薄い人、創造性の高い人

 

④  

うつ病はどれほど一般的か:約1800万人の米国人が常にこの病気にかかっている、成人の7%が精神衛生上の問題を抱えている、26%の人が神経衰弱に近いものを感じたことがある、2020年には心臓病についで2番目に健康を脅かすものになる

 

うつ病になると何をどう感じるか:気分の変化、認識力の変化、身体的な変化、行動の変化

 

⑥ 

充分に認識されていない病気:患者の約3分の1はうつ病であることに気づいていない。気づいている患者の3分の2は適切な治療を受けていない(認識が限られていること、恥ずかしさと秘密保持、経済的不安、病気の影響)

 

治療の重要性:80%がよくなる、放置しておくと他の数々の健康へのリスクが高まり、自殺の危険も高まる

 

(1)   人間関係

(2)   仕事や勉強の業績

(3)   中毒の回避

(4)   健康の改善

(5)   不眠症

(6)   体重増加と運動不足

(7)   心臓病と脳卒中

(8)   高血圧

(9)   その他の病気

(10) 再発のリスクを減らす

   (自殺の防止)

 

 

第2章    自分にリスクはあるか:うつ病は多因子が組み合わさって発病する

 

 

家族歴

 

遺伝的な因子

 

ストレスの多い状況:死その他の喪失、人間関係での問題、人生における大きな出来事、仕事のストレス

 

過去の経験:両親間の激しい対立、家庭内暴力、虐待、別離、離婚、死亡による親の喪失、親の病気、幼児期の虐待、外傷性ストレス障害(PTSD)、アルコール依存の家庭

 

薬物依存症:30−60%が気分障害や不安障害にかかっている、約20%がうつ状態、アルコール乱用者の30%がうつ病の診断基準を満たす

 

処方薬:プレドニゾン、消炎剤、インタフェロン、テオフィリン、ジアゼパム、クロルジアゼポキサイド、プロプラノロール、経口避妊薬、抗がん剤

 

医学的状態:ホルモン関連(殊に甲状腺、副腎)、心臓病、脳卒中、がん、アルツハイマー病、パーキンソン病、閉塞性睡眠時無呼吸、慢性的疼痛

 

 精神医学的問題:楽観主義と悲観主義、学習性無力感

 

その他の精神疾患:不安障害(全般性不安障害、社会性不安障害、パニック障害、強迫性障害)、摂食障害(神経性食欲不振症、神経性食欲異常亢進症、無茶食い障害)、身体醜形障害(最大75%がうつ病にかかる)、境界性人格障害

 

 

第3章    うつ病の生物学

 

 

家族、養子、双子に関する研究:家族にうつ病者がいると、発症率が高い、養子の親がうつ病だと発病率が高い、一卵性双生児の片方がうつ病に罹った場合、他方の発病する確立は二卵性双生児の場合よりも高い

 

ホルモンの研究:甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン(コルチゾル)、ストレスホルモン、性ホルモン

 

脳の画像化の研究:(PET)

 

薬物治療に関する研究:ノルエピネフリン、セロトニン

 

解剖学と生理学

 

脳の画像化

 

うつ病の画像(活動する神経伝達物質)

 

肉眼レベルから顕微鏡レベルへ(活動する神経伝達物質)

 

脳細胞はいかにして情報を伝達するか

 

神経伝達物質とうつ病

 

うつ病と老化:高血圧症、糖尿病、高脂血症

 

 

第4章   うつ病の認識と診断

 

 

警告のサインは何か:悲しみが長く続く、怒りっぽくなる、不安を感じる、生活の中での興味や楽しみを失う、個人の責任や身だしなみを怠る、食生活が変わる、睡眠パターンが変化する、疲労を感じエネルギーを失う、集中力・注意・記憶が衰える、気分が極端に変わる、無力感を感じる、絶望感を感じる、自分には価値が無いと思ったり、罪悪感を持つ、否定的な考えが続く、身体的な症状があるが治療をしても良くならない、アルコールや薬物の量が増える、死や自殺を考える

 

診療を受けるまでの手順

 

メンタルへルスケアを行うのは誰か

 

どこで始めるべきか

 

診断の手順:相談と病歴、身体の診察と検査、個別質問集

 

 

第5章             うつ病の型(DSM―Ⅳ)

 

大うつ病

気分変調

適応障害

双極性障害
うつ病のほかの側面
うつ病診断のための他の用語

正しく捉える

 

 

第2部    うつ病の治療

 

第1章        薬の働き(薬物療法)

 

第2章          カウンセリングと心理療法

 

第3章           電気ショック療法とその他の生物医学的療法

 

電気ショック療法

 

光療法

 

TMSとVNS

 

 

第4章          セルフヘルプ戦略

 

つらい時を乗り越えて:自分を責めない、治療計画には慎重に従う、落ち込まないように努める、人生の重要な決断は行わない、生活をシンプルにする、参加する、小さな進歩を認識する

 

健康な生活のための処方箋:自然治癒力、健康な心身、人生の意味付け

 

身体的健康を気遣う:活動的であれ、賢く食べる、十分な睡眠

 

感情面での健康管理:怒りのコントロール、許すことを学ぶ、悲嘆をうまく処理する、常に楽観的な見方をする、日記をつけ始める、ストレスをコントロールする、リラクゼーション・テクニックの練習、社会参加

 

精神的に必要とされる癒し(spirituality):

 

攻撃は最大の防御:再発を警告するサインに常に注意する

 

第3部       特定の層にかかわること

 

第1章       女性とうつ病

 

うつ病は女性の方が男性より2倍の患者がいる。月経前不快気分障害、妊娠中うつ病、産後うつ病、閉経期うつ病な ど、女性特有のものがある。

 

第2章       高齢者とうつ病

 

高齢者は身体疾患を持っている人が多い、うつ状態を誘発する薬を服用している場合がある、退職、死別、内省死の 恐怖などのため、うつ病になりやすい。アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、その他でうつ状態になり やすい。

 

第3章     子供と10代のうつ病

 

子供はうつ病にかかるほど精神的に成長していないと考えられてきたが、子供でもうつ病はよく起こることが分かってきた。アメリカの子供の33人に一人、10代の8人に一人、常に子供と10代の3%がうつ病となっている。10代がうつ病になると5年間でうつ病が再発する率は50%である。

5歳から24までの自殺率は1960年の3倍にまで増加している。

 

第4章    障害が混在している場合

 

不安とうつ病、薬物乱用とうつ病、摂食障害とうつ病、身体醜形障害とうつ病、人格障害とうつ病

        

第4部    うつ病患者と共に暮らす

 

第1章         自殺と自殺への対処

 

どんな人にリスクがあるか:うつ病罹患、以前自殺未遂をしたことがある、アルコールや薬物を乱用している、自殺の家族歴がある、男性である、銃を手に入れられる

 

警告サイン:自殺の兆し、他の人から離れてゆく、むら気、性格の変化、危険な行動、個人的な危機、持ち物を人にあげる、回復を見せ始める

 

自殺についての考えと行動に対処する――「聞いてみること」(本当に死のうと思っているのか、自分自身を傷つけようと思っているのか、いつ・どのように死のうと思うのか)*自殺について話をするときは、秘密を守ることを約束してはいけない。又、自殺が予期されたら、支えとなり、感情を移入し、必要があればあらゆる限りの予防処置をとること。

 

スーサイド:サイバー(残された人々):1人の自殺者で、その死に影響される人数は平均6人と推定されている。

 

(1)

共通する感情:混乱、悲嘆、絶望、怒り、罪悪感

(2)  

助けを求める:喪失について対処できない場合は専門家の助けを求めること

(3) 

対処の仕方を身に付ける:感情を吐き出したいときは話を聴いてもらう、関係を維持する、悲嘆を 感じるままにする、あなたの人生は生きる価値がある

 

第2章        家族と友人の役割

 

側にいること

 

どう支えるか:自分が心配していることを表現する、どうしたら助けられるか聴く、希望を与える、楽観的に元気付ける、ユーモアのセンス、健康的な行動と活動をするよう促す。

 

抵抗に対処する:本人がうつ病であり、専門家の援助が必要なことをわかってもらうために、批判的にはならずに、その人の行動や気分、考え方の変化で自分が気づいていることを話す。または、専門家のところに一緒に行く。

 

負担を背負う:うつ病を理解し、その人の面倒を見ると同時に責任の一部を負担する。

*重過ぎる負担(アルツハイマー協会の介護者のストレス10)否定、怒り、社会的引きこもり、不安、うつ病、疲労、不眠、集中力の欠如、健康問題

 

自分を大切にする:困難な時期にいかに状況に対処し、自分を大切にするかで、自分の健康と自分の大切な人のうつ病への対応力に大きな差が生まれる。

* ストレスを管理し緩和するステップ:助けを集めて得る、自分の感情を受け入れる、アドバイスとサポートを求める、自分のための時間をつくる。

 

 

バランスのとれた行動:自分はたった一人であり、出来ることには限りがある。トンネルの最後には光があることを何度も自分に言い聞かせること。

 

 

以上

 

*     院長注釈:

これはメーヨー・クリニックの患者、家族用の読本です。日本にも簡単なうつ病に関するパンフレットは沢山ありますが、これだけ丁寧で分かりやすいものはありません。疾病分類ではアメリカ精神医学会のDSM−Ⅳを使用しておりますが、日本ではWHOのICD−10を使用しております。最近のヨーロッパ6カ国、78、463名の市民調査によれば、6ヶ月間のうつ病の有病率はうつ病8.7%、うつ状態8.3%で、市民の17%がうつ病、うつ状態と判断されました。最近はSSRI、SNRIなど、比較的副作用の弱い抗うつ薬が開発利用されております。

(日下忠文)

 

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