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無症候性脳虚血性病変

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    【はじめに】

    MRIの普及により、無症候性脳梗塞を診断・治療する機会が増加してきた。しかしその出現頻度は、脳ドック委員会の報告では10〜80%と施設によりかなり開きがある。

    これは使用機種や受診者の年齢構成なども関係していると思われるが、施設により「無症候性脳梗塞」の画像診断上の定義が異なっているためであろうと考えられる。今後治療効果などの判定を検討する上でも、画像診断上の定義を統一しておくことは重要である。

    T2強調画像にて高信号域を示す病変は無数に存在するが、出現頻度も高くlacunaと鑑別が必要なものにleukoaraiosis,etat cribleなどがある。今回はこれらの病変の画像診断上の特徴及びその出現頻度について紹介する。

    【対象および方法】

    脳ドック受診者1615例を対象とした。使用機種はSigna Advantage/Horizon(1.5T,GE)で、T2WI,T1WI,FLAIR,diffusion image(single shot EPI)を用い、それぞれの病変の画像上の特徴および経時的変化を検討し鑑別を試みるとともに、脳ドック受診者における出現頻度を検討した。

    【出現頻度】

    lacunaは加齢に伴ない増加し、50歳代で8.7%、60歳代で16.8%に認められた。平均の出現頻度は6.8%であった。一般に報告されている頻度よりやや低いが、我々の脳卒中ドックは主に企業を対象としており、受診者に若年者が多いことと関係していると考えている。

    Leukoaraiosisは軽度なものも含めると、50歳代の約半数に認められ、60歳代では80%に認められた。平均の出現頻度は42.5%であった。

    またetat cribleも加齢に伴ない増加するが、30歳代でもすでに焼く半数に認められる。平均出現頻度は72.1%であった。

    【結語】

    1)lacunaと鑑別の必要な病変にはleukoaraiosis, etat cribleがある。これらずべてを「無症候性脳梗塞」と診断するのは誤りであり、受診者にいたずらに不安を与える結果となる。

    2)lacuna,leukoaraiosis,etat cribleの出現頻度は、それぞれ6.8%・42.5%・72.1%であった。

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